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Channel: マンガやわやわ
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聖伝

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聖伝 選者:リエ
選者よりひとこと「衝撃的なラスト」


キコ「絵がかわいいよねえ」
リエ「え?どこが?」
キコ「阿修羅が」
リエ「ああ。阿修羅か。でも結構血がドバドバですよ、これ」
キコ「うん。読み終わった時に血がドバドバしてたことしか覚えていないくらい」
リエ「そんな(笑)」
キコ「線が太いし、絵柄が濃い。絵もコマからはみ出してる。バ~ン!と。でもそのシーンを読むと、別にたいした話じゃなかったりして」
リエ「フツーに登場すればいいところを、いちいちバ~ン!としてますね」
キコ「花をしょって出てくるみたいな…みんな自己顕示欲が強いな~」
リエ「神様ですから(笑)」
キコ「最初、神様同士のドロドロした人間関係や諍いを茶化してるんだと思ったよ」
リエ「インド神話だからドロドロしてるんですよ!それに、ギャグならこんなに壮大な物語にできないですよ!」
キコ「あれよという間にみんなが自滅していくわけだけど、最後は無だよね。何も残らない虚しさ」
リエ「萩尾望都の世界観に通じるものを感じる。スター・レッドのような。どうしてこうなってしまったんだろうと読み返さずにはいられない」
キコ「最後は、敵も味方もグチャグチャになって殺しあう」
リエ「どこが衝撃的かというと、どんでん返しが多いんですよ」
キコ「持国天の正体とかね。お前だったのかっ!という」
リエ「そうそう」
キコ「女同士でもいろいろやってますな。愛し合ってるかと思えば殺しあったり」
リエ「人間以上に業の深い神様たち(笑)」
キコ「裏切りも激しい。最初は神様だから死なないのでやりたい放題なのかと思ったけど、ちゃんと死ぬんだね」

リエ「90年代前半の匂いがプンプンする。ファンタジックで豪華で」
キコ「贅沢なマンガだよね。肉のてんこ盛りみたいな。豚の丸焼き。今の時代なら消化できないよ」
リエ「いかにもマンガが娯楽のメインだった時代の作品」
キコ「人の動きもゲームっぽくない?」
リエ「え~。そうかな~」
キコ「殺され方もドラマチックだし。これ読んで、神様を愛でてるコアなファンにウケてるのかと思った。吉祥天女、こんなキャラじゃないやろ~とか。でも当時はそんな読者いないか」
リエ「今ならともかく、いないですよ(笑)」
キコ「破壊の仕方がわかりやすい。殺したり建造物をめちゃくちゃにしたり」
リエ「悪役じゃくて、身内がやるんですよね」
キコ「あまりに死にすぎるもんだから、最後らへんはもうマヒしてきて、何が起きても驚かなくなった」
リエ「そうそう」
キコ「描いてる方にはカタルシスがあるんだろうけどね」
リエ「かわいいキャラなのに内蔵が出たりとか、こういう死に方をさせるのが、他のマンガにはなかった」
キコ「グロっぽいよね。わざわざそんな死に方をさせなくても」

キコ「登場人物の感情がわかりやすく表現されてるから、少年マンガかと思ったよ。作者は男なのかと」
リエ「でも男が描いたら、ここまでの意外性はないんじゃないかなあ。男が作者だったら、強い女は強いだけだと思う」
キコ「女だから、ここまで残酷に殺せるのかもね。大好きなキャラを殺してみたい。この死に顔を描きたくてここまでやってきたのよ~っていう」
リエ「どうせ殺されるなら私の手で(笑)。でも、神様同士でレズビアンは衝撃だったです」
キコ「そうか。ホモはありがちだけど。だからどことなくノリが宝塚っぽい?顔も宝塚系」
リエ「いわれてみれば」
キコ「宝塚で舞台化すればいいのに」
リエ「宝塚でやるにはこの流血が(笑)」
キコ「衣装やメイクが宝塚向きだと思うんだけどな~」
リエ「話が壮大すぎて、まとめきれないですよ(笑)」

キコ「私は阿修羅があまり好きじゃない。感情移入できなかった」
リエ「さっきかわいいって言ってたじゃないですか」
キコ「あれは絵柄がっていう意味。憎たらしい。この子。最初は無垢な感じでかわいくて、あしゅらのせいなの?って平仮名で自分の名前を呼んで泣いたりしてたくせに」
リエ「かわいそうな子じゃないですか。親に殺されかけて」
キコ「元凶なんだから、殺されかけたっていいんだよ」
リエ「そんな…でも最後は一瞬正気に戻って、優しくなったじゃないですか」
キコ「その頃に戻ってもねえ。最初はかわいい子ブタちゃんみたいに描いているあたりが、なんかもうあざとくて」
リエ「最初にそうしときゃないと、あの破壊行動を読者に許してもらえないから(笑)」
キコ「ずるい」
リエ「出た。またずるい発言(笑)」

リエ「帝釈天が悪者だったのに、実はそうでもなかったという」
キコ「日本モノでよくあるパターン」
リエ「でもこの時代に、そういう展開あった?」
キコ「う~ん。わからない。私のマンガ暗黒時代だからあまり読んでなくて」
リエ「日本人ってこういうのが本当に好きなんですかね」
キコ「最初は帝釈天の反逆理由が明かされないでしょ。で、単なる恩知らずの極悪人による下克上かと思わせておいて、最後になって実はこんな深い理由が…って同情するようなことを知らされてもねえ」
リエ「え~。そのどんでん返しがいいんじゃないですか!」
キコ「そのどんでん返しがまたか!という…ダメだ。もう大人だったから、純粋に驚けない」
リエ「やっぱ中学生くらいで読むべきですね(笑)」

キコ「虚しいラストなのに、この絵のせいで余韻に浸れない。無になっても押しが強いこの絵柄。なんだかまだ熱いんだよ。実はまだ生きてるのがいるんじゃないかという」
リエ「ハリウッド的?」
キコ「宝塚的(笑)」
リエ「豪華なんですよね」
キコ「砂漠化はしてない」
リエ「神様だから、なんとかするんじゃないかと」
キコ「ならこれは、神様同士で遊んでいたの?」
リエ「あとがきの前にパロディマンガが載っているけど、死んだキャラがフツーに生きている(笑)」
キコ「やっぱり神様だから、本当に死んでるのかどうかアヤシイ。肉体はなくなっても魂がまだあるんじゃないかと」
リエ「そこまでいくと、そもそもここでの神様というのは何なんかという定義が…神というより、寿命が長い種族?」
キコ「戦国時代の争いみたいな話だけど、滅びても生まれ変わってまたやり直してるんじゃないの?」
リエ「いや、神様でもちゃんと死にますよ(笑)」


リエ「どれかのキャラに感情移入できたら、楽しく読める」
キコ「女が多いよね」
リエ「キャラ的に女の方が面白いですよね」
キコ「みんなそれぞれ特徴があって華があるから」
リエ「男は内面がよくわからない。みんな」
キコ「セリフが業務連絡みたいだから?」
リエ「そこが少年マンガぽいところかも。戦いのシーンばかりで」
キコ「でも、あまり内面を描かれると、読んでいて疲れるかもね。流血シーンでいちいち独白されちゃあ…あっさり読むためには、これくらいでちょうどいい?」
リエ「重要キャラがいても、掘り下げないですよね~」
キコ「なんにしてもキャラが多い。画面がいっぱいいっぱいで、ぎゅうっと詰め込まれているイメージ。でもそれでも最後まで読ませるところはすごいね」
リエ「映画みたい」
キコ「ゲームに近いかな?」
リエ「勢いがね」
キコ「もともと神様のキャラを知ってるし、神様だからべつに悲惨な死に方してもそんなにつらくないのがいい。ノリは少女マンガで、表現は少年マンガ」
リエ「その間を行く新しいマンガということで」
キコ「今はこんなタイプのマンガはないな~暑苦しさが懐かしい。この最後の破壊はバブル崩壊か?」
リエ「その時代の不安感が出てるかもしれないですね。これからじわじわと来るなという」
キコ「気力がないね。今は描く方も読む方も」
リエ「たら~んとしてる癒し系が主流」
キコ「足湯みたいな」
リエ「あ~あ。また熱いマンガが読みたいな~。一緒になってガ~っと盛り上がって」
キコ「続きを読むまでは死ねないマンガ」



 


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